おいしいお米の話

日本人に欠かすことのできないお米

 稲作の始まりは今から6000年ほども前とのこと。場所は、インドのアッサムとか、中国雲南の山岳地帯とか、諸説あるようです。
 日本では石器時代に狩猟の傍ら野生の稲を蒔いて米を食べていたとも考えられており、水田跡の発見から、2500年から2600年程前の縄文時代晩期後半には稲作が行われていたことがわかっています。また研究の結果、最初に栽培されたお米は「赤米」だったのではないかと考えられています。
 「赤米」は「うるち米」と同じ系統です。お米の祖先といえるかもしれません。最近の古代食ブームや、「赤米」を白米に混ぜて炊くことでかわいい桃色のごはんができることから人気があり、ここ数年各地で栽培されるようになっています。
 また「赤米」に対して「黒米」もあります。こちらは「もち米」の系統で、「赤米」と同じころ、中国や東南アジアで栽培されたのが始まりといわれています。
 「イネ」の栽培が始まった6000年ほど前から現代まで、私たちが日々口にしているお米は幾度となく品種改良され、長い年月を経て今日に至っています。

お米の分類

 お米は、大きく分けて2種類に分類されています。その一つは「うるち米」です。これは私たちが普段食べているご飯のもととなるお米であり、「コシヒカリ」や「ひとめぼれ」などがそれに当たります。
 またもう一つが「もち米」です。粘りが強く、その名のとおり「もち」にするためのお米です。これにも「こがねもち」や「ヒヨクモチ」といった品種があります。
 そして、その2種類のお米の中間に位置するのが、低アミロース米といわれるお米です。これは2分類の中では「うるち米」に属しますが、通常のうるち米よりも粘りが強く、もち米に似た食感が味わえます。最近の代表品種は「ミルキークイーン」です。

おいしさの決め手は?

 「うるち米」と「もち米」の違いは、でんぷんの性質の違いにあります。お米の約70%を占めるでんぷんには、アミロペクチンとアミロースという2種類があり、この2つの配分の違いが「もち米」と「うるち米」の特性を左右しています。
 アミロペクチンが多いお米(=アミロースが少ないお米)は、粘りがあり、ほどよい歯ごたえがあります。一方、アミロペクチンが少ないお米(=アミロースが多いお米)は、硬く、パサパサしています。
 アミロースの少ないお米の代表が、もち米です。もち米にはアミロースが含まれていません。またうるち米でも低アミロースのミルキークイーンは、もち米に似たもちもちとした食感が特徴です。コシヒカリ系の品種も、ミルキークイーンほどではありませんが、もちもちとした食感の粘りのある品種です。そして、かつてコシヒカリと双璧をなしていたササニシキなど、アミロース値の高めな品種は、粘りが少なく、あっさりとした食感が特徴になります。
 好みは人それぞれです。粘りのあるごはんが好きな方は、アミロース値の低いお米を選ぶとよいでしょう。また粘りの少ない、さっぱりとした食感を好まれる方は、ササニシキなどのお米を選ばれるとおいしくお召し上がりいただけると思います。
 ちなみに、アミロース値の高いお米の代表は、タイ米などのインディカ米です。日本のお米(ジャポニカ米)のアミロース含有量が15〜25%程度なのに対し、インディカ米は25〜40%となっています。

お米は栄養の宝庫です

 お米の成分は炭水化物だけではありません。お米の中には、パワーの源となる、質が良く、消化・吸収も高いでんぷん(炭水化物)のほか、タンパク質や脂肪、ビタミンB1やビタミンEなどの栄養素がふんだんに含まれており、まさに栄養の宝庫です。
 ごはん茶碗一杯でタンパク質は牛乳130ccと同じくらい、ビタミンEはゴマ小さじ8杯分を摂ることができます。

お米は太りやすい?

 「ごはんは太りやすいから」ってついつい思いがちです。栄養の宝庫なんて聞いたら余計に警戒してしまう方もいるでしょう。でも実際には全く逆で、ごはんはヘルシーな食品の代表格です。
 ごはんは粒でできています。このため、粉からできているパンや麺類より、ゆっくりと体に消化・吸収されていきます。だからごはんは、お腹がすきにくく、腹もちが良いのです。また、消化・吸収が遅いため、体に脂肪を貯めるホルモンの分泌が穏やかになり、太りにくい体づくりに役立っています。
 さらに、白米を科学的に分析すると、77.1%が炭水化物、水分が15.5%、タンパク質が6.1%という構成で、脂質をほとんど含んでいません。また、炭水化物は消化・吸収されると脳の唯一のエネルギー源であるブドウ糖になります。このブドウ糖が不足すると、肝臓に蓄えられているグリコーゲンが働きます。グリコーゲンは脳の「非常食」で、ブドウ糖に変化して脳に供給されます。そのため、普段からあまりごはんを食べない人は、肝臓のグリコーゲン量が不足し、臓器や筋肉に「グリコーゲンをあまり使うな」という指令が下されてしまいます。すると眠たくなったり、代謝も悪くなっていきます。
 そして脳は、糖質を確保するために、筋肉を分解し、消費を始めます。そのため、本来減らしたいはずの脂肪は蓄積されたまま、筋肉が減る現象が起こります。筋肉が減ると基礎代謝が低下するため、太りやすい体になっていくのです。
 基礎代謝を高める筋肉のもとはタンパク質です。でもそれだけではいけません。野菜はもちろんのこと、ごはんをきちんと食べることが、効率よく、バランスの良い健康な体づくりの基本となるのです。

元気な一日は朝ごはんから

 前述のとおり、脳を働かせるエネルギー源となるのがブドウ糖です。そしてブドウ糖は、ごはんなどに含まれる炭水化物が分解されて作られています。だから朝ごはんを食べないと、脳のエネルギー源であるブドウ糖が不足して、だるいと感じたり、集中力の低下を招いたりしてしまいます。
 また、文部科学省が行った調査でも、朝食をきちんと食べる習慣のある子供ほど、テストで正しい回答が多いという結果が出ています。同じく運動面においても、毎日朝食を食べている子供ほど、体力合計点が高いということです。
 人は眠っている間に体温が1度ほど下がります。そして朝ごはんを食べることで、体温が上がります。朝ごはんを食べないと、学校に行っても体温が上がらず、給食を食べるまで低体温状態が続き、脳や体が活発に働けないということになります。
 朝食べる温かいごはんとお味噌汁が、元気な一日のスタートに役立っています。